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こんにちは、香料業界で10年以上働いているフィグです。
- 「なぜチョコレート菓子はこんなに濃厚な香りがするんだろう?」
- 「透明なのにオレンジの味がする飲み物って不思議…」
私たちの身の回りには「香料」を使った商品があふれています。
でも、なぜメーカーはわざわざ香料を加えるのでしょうか?
香料を使う理由は4つです。
- 強化 :本来の香りを強くします
- 補填(ほてん):失われた香りを補います
- 追加・付加 :新たに香りを加えます
- マスキング :好ましくないにおいを隠します

コストを抑えつつ、商品の価値を高めることができます。
本記事はチョコレート菓子、濃縮還元ジュース、無果汁飲料、子供用の薬など、具体例で4つの理由を図解付きで詳しく紹介します。
「なぜ美味しそうな匂いがするの?」という疑問にも答えられるようになります。
香料は私たちの生活を豊かにする重要な技術です。4つの役割を知ることで、身の回りの商品がどれだけ工夫されているかが分かります。
まずは、強化について見てみましょう。
目次
強化 ~本来の香りをより強く~

もとから香りがある素材に香料を加えることで、香りがより強くなり、本物らしくなります。
特に食品でよく使われています。
食品の例を見てみましょう。
チョコレート

チョコレート菓子 + チョコレートフレーバー
→ チョコレート感アップ
(フレーバー:香料業界では食品香料のことを言います)
チョコレート菓子に「チョコレートフレーバー」を足すことで、チョコレートの香りがより広がります。
バニラアイス

バニラアイス + バニラフレーバー
→ バニラ感アップ
バニラアイスに「バニラフレーバー」を足すことで、バニラの香り豊かなアイスが出来上がります。
バターパン

バターパン + バターフレーバー
→ バター感アップ
バターパンに「バターフレーバー」を足すことで、バターの香りが強いパンが出来上がります。

スーパーにあるパン屋さんでバターの香りが強めに感じる時は、バターフレーバーを使用している可能性が高いです。
コストメリット
香料を使うことは、香りを強化するだけでなく、コスト面でもメリットがあります。
例えば、パンにバターをふんだんに使用したいですが、バターは高価であり、パン自体の価格が高くなってしまいます。
そこで、バターを使うよりも安いバターフレーバーを使用することで、バターの使用量を少なくしつつ、バター感を出すことができます。

バターは天候や流行りで入手困難になり、価格が高くなります。
コストを抑えつつ、香りを強くすることができるのは香料ならではのメリットです。
補填(ほてん) ~失われた香りを補う~

商品を作る流れの中で、香りが失われたり、弱まったりすることがあります。
そこで、香料を追加することで、元の香りの状態に戻したり、元の状態以上に香りを豊かにさせたりすることができます。
1つ目の理由の「強化」と似ていますが、失われた香りを戻すという意味で、「補填」としました。
濃縮還元ジュースの例を見てみましょう。
濃縮還元ジュース
濃縮還元ジュースにフレーバーが使われます。
オレンジジュースにオレンジフレーバーを加えることで、よりオレンジの香りがするオレンジジュースになります。

オレンジジュース + オレンジフレーバー
→オレンジ感アップ
この説明だけですと、「強化」と同じように見えるかもしれません。
ここで、濃縮還元ジュースが作られるまでの流れ知ることによって、「補填」の意味を知ることができます。
ジュースができるまでの簡単な流れを以下に示します。

- 搾汁:ブラジルでオレンジを絞ります → ジュース
- 濃縮:ジュースの水分を飛ばします → 濃縮ジュース
- 輸送:濃縮ジュースを船で日本に運びます
- 還元:日本で濃縮ジュースに水とフレーバーを加えます → ジュース
この4番目の濃縮ジュースに水を加えるときに、フレーバーも加えます。
なぜかと言いますと、2番目の濃縮ジュースを作る時に、水分を飛ばして濃縮するのですが、水分と共に香りも飛んでしまうためです。
そこで、飛んでしまった香りを輸送後にフレーバーを加えることによって、香りを補っています。
水分を飛ばして濃縮ジュースにする理由はコスト削減のためです。
本来の香りが失われたり、弱まったりした時に、香料を加え、香りを補うことで、商品の価値を高めます。
追加・付加 ~新たに香りを加える~

もともと香りのない商品でも、香料を加えることで心地よい香りを演出できます。
食品と日用品のどちらにもよく使われています。
まずは、食品の場合から見てみましょう。
無果汁ジュース
コンビニやスーパーで、果汁0%のジュースを見つけることができます。これにはフレーバーが大きく役立っています。
砂糖水にオレンジフレーバーを数滴いれて、オレンジ色の色素を加えると、果汁を使っていないのに、オレンジジュースになります。

砂糖水 + オレンジフレーバー + 色素
→ 無果汁オレンジジュース
※色素(しきそ):色を付ける材料
同じように、砂糖水にグレープフレーバーを加えて、紫色の色素を加えると、グレープジュースになります。

砂糖水 + グレープフレーバー + 色素
→ 無果汁グレープジュース
フレーバーウォーター
フレーバーウォーターとは、フレーバーを加えますが、色素を加えない飲み物です。

最近、流行っており、見た目は透明な水です。
砂糖水にオレンジフレーバーを加えて、無色透明なオレンジジュースになります。

砂糖水 + オレンジフレーバー
→ 透明な無果汁オレンジジュース
フレーバーをグレープフレーバーに変えたら、無色透明なグレープジュースになります。

砂糖水 + グレープフレーバー
→ 透明な無果汁グレープジュース
見た目は透明ですが、まるで果汁ジュースを飲んでいるような感覚になります。
そのため、美味しさと意外さのどちらも楽しむことができます。

外国人が水と間違えて買ってしまい、飲んで驚くこともあるそうです。
フレーバーアイス・フレーバーシロップ
バニラアイスに本物のミントは入れずに、ミントフレーバーを加えることで、ミントバニラアイスになります。

バニラアイス + ミントフレーバー
→ ミントバニラアイス
また、シロップにイチゴ果汁は入れずに、ストロベリーフレーバーを加えるとイチゴシロップになります。

かき氷シロップ + ストロベリーフレーバー
→ イチゴかき氷
かき氷のストロベリーフレーバーはファンシーフレーバーと言われ、イチゴ本来の香りではないです。
次に、日用品の場合を見てみましょう。
洗剤
洗剤に花の香りを加えることで、服を着た時に花の香りを楽しむことができます。

洗剤成分 + フレグランス
→ 服を着た時によい香りがする洗剤
(フレグランス:香料業界では香粧品香料のことを言います)
※香粧品(こうしょうひん):香水、化粧品等の食品以外全般
香水
水とアルコールにフレグランスを加えることで、香水になります。

まさに香料が主役の商品です。

水 + アルコール + フレグランス
→ 魅力的な香水
ガス
危険を知らせるために、香料を使用することがあります。
※香料業界では付臭(ふしゅう)と言います。
プロパンガスや都市ガス自体の香りはそれほど強くありません。そのため、ガスが漏れた時に気がつかずに火をつけてしまうと、引火してとても危ないです。
そこで、すぐにガス漏れを気が付けられるように、人間が嫌だと感じやすい香りが加えられています。

ガス + フレグランス
→ すぐに気が付く匂いのあるガス
この時の人間が感じやすい香りは、においと言ったほうが良いかもしれません。

人が嫌だと感じるにおいです。
(きつい香りの成分については別の機会に紹介します)
マスキング ~好ましくないにおいを隠す~

香料で、好ましくないにおいを覆い隠すことで、においを弱くしたり、感じさせなくしたりすることをマスキングと言います。
商品を作る時に、原料そのものに好ましくないにおいがあったり、加工する途中で、どうしても発生してしまうにおいがあったりします。
好ましくないにおいを隠すために、香料を加えます。
薬
薬自体の好ましくないにおいを隠し、飲みやすくするために香料を加えることがあります。

薬 + フレーバー
→ 赤ちゃんや子供にとって飲みやすい薬
薬には好ましくないにおいや味があることが多いです。大人なら、薬を飲めば病気が治りやすくなると知っているので、苦くても我慢して飲みます。
しかし、赤ちゃんや子供はとても素直ですので、口に苦いもの入れるとすぐに吐き出してしまいます。
そこで、フレーバーを加えることで、好ましくないにおいを隠し、薬を飲みやすくすることができます。

大人向けの薬にもフレーバーが使われています。
次に、マスキングを商品とした例を見てみましょう。
芳香剤
マスキングを商品にした例として、芳香剤があります。芳香剤はより強い香りを広げることで、嫌なにおいを感じさせにくくしています。

芳香剤は嫌なにおいを消していないので、実際は、嫌なにおいも存在しています。
ただ、人は芳香剤の強い香りの方を感じているため、嫌なにおいを感じにくくなっているだけです。
においを消すという言葉に「消臭」があります。消臭は嫌なにおいをキャッチすることで、におい自体が広がるのを防ぎます。

マスキングはかぶせるイメージです。
基本的に香りの量が多ければ、人は香りを強く感じることが多いです。しかし、香りの量が少なくても、人が香りを強く感じてしまうこともあります。
まとめ
香料を使う4つの理由
- 強化 :本来の香りを強くします
- 補填(ほてん):失われた香りを補います
- 追加・付加 :新たに香りを加えます
- マスキング :好ましくないにおいを隠します
次のステップ
クイズ:炭酸飲料には香料が何%使われているでしょうか?
① 0.2%
② 2.0%
③ 20.0%