こんにちは、化学系の大学院を卒業し、香料業界で10年以上働いているフィグです。
ゆずは良い香りのため、よく料理に使われています。
ゆずらしい香りの正体はどんな成分でしょうか?
ゆずの香り成分は75以上あり、特にゆずらしさに関係する成分は以下です。(香り成分=有機化合物です。)
・チモール
・ペリラアルデヒド
・リナロール
・N-メチルアントラニル酸メチル
・ユズノン
![](https://www.booster-fig.com/wp-content/uploads/2020/05/yuzu-aroma-component.png)
ゆずオイルにはリモネンが約60%含まれており、残り約40%の香り成分でゆずらしい香りになります。(オレンジオイルやレモンオイルには、リモネンが約80%を占めています)
リモネン以外の香り成分が、香りに大きな影響を与えています。
ゆずの香り成分について、名前だけでなく形を知ることで、イメージしやすくなります。
より詳しく構造式や分子模型の写真を見てみましょう。
目次
1.チモール Thymol
![](https://www.booster-fig.com/wp-content/uploads/2020/05/thymol-structural-formula.png)
左の図 :簡略された構造式
真ん中の図:炭素(C)を表した構造式
右の図 :炭素(C)と水素(H)を表した構造式
構造式の下には分子模型の写真です。各ブロックの色は以下の元素を示しています。
黒色:炭素
赤色:酸素
水色:水素
右の構造式は炭素(C)と水素(H)が表されており、最初の簡略された左の構造式と比べて、入り組んでいて、分かりにくいですね。
![フィグ](https://www.booster-fig.com/wp-content/uploads/2022/01/f0fc1d7efd3b37b0f38d0114cdae51ac.png)
化学者(特に有機化学を専門している人)は頭の中で左の図(構造式)から、右の図に変換できるようです。
分子は立体的ですので、回転できる部分があります。分子模型で回転させてみましょう。
![](https://www.booster-fig.com/wp-content/uploads/2020/05/thymol-rotation.png)
どちらの分子模型もチモールです。簡略された構造式は分子の状態の一瞬を切り取ったにすぎません。
2.ペリラアルデヒド Perillaldehyde
![](https://www.booster-fig.com/wp-content/uploads/2020/05/perillaldehyde-structural-formula.png)
左の図 :簡略された構造式
真ん中の図:炭素(C)を表した構造式
右の図 :炭素(C)と水素(H)を表した構造式
分子模型の色と元素の関係を以下に表します。
黒色:炭素
赤色:酸素
水色:水素
ぺリラアルデヒドの構造式中の六角形の部分と、チモールの六角形は、構造式では同じ正六角形で表示されます。しかし、分子模型の写真で比べると、ぺリラアルデヒドの六角形の方がいびつに見えます。これは炭素と炭素の結合の仕方が違うためです。
![フィグ](https://www.booster-fig.com/wp-content/uploads/2022/01/8bfa711f9df911d9c9966991f4bc2b01.png)
紙の上に書いた構造式と、実際の分子の形には差があるということです。
3.リナロール Linalool
![](https://www.booster-fig.com/wp-content/uploads/2020/05/linalool-structural-formula.png)
左の図 :簡略された構造式
真ん中の図:炭素(C)を表した構造式
右の図 :炭素(C)と水素(H)を表した構造式
リナロールには2種類あります。
2種類のリナロール
- d -リナロール(ラベンダー様の香り)
- l -リナロール(プチグレン様の香り)
d -リナロール(ディーリナロール)とl -リナロール(エルリナロール)と読みます。
構造式の違いを見てみましょう。
![](https://www.booster-fig.com/wp-content/uploads/2020/05/linalool-structural-formula-asymmetric-carbon.png)
2種類のリナロールの違いは赤丸の炭素(不斉炭素)において、どちら向きに結合するかによって、生じています。
黒く塗りつぶした三角は手前側に飛び出ていて、破線の三角は奥側にあることを意味します。
分子模型で見ると、酸素(赤色)がd -リナロールでは手前にあり、l -リナロールでは奥側にあることが分かります。
さらに、水素を追加した場合の構造式と分子模型を見てみましょう。
![](https://www.booster-fig.com/wp-content/uploads/2020/05/linalool-structural-formula-asymmetric-carbon-2.png)
![フィグ](https://www.booster-fig.com/wp-content/uploads/2022/01/070c90365830bb14f4dff35d87b7ac98.png)
構造式も分子模型もごちゃごちゃしていますね
d -リナロールとl -リナロールを左右で比較してみましょう。
![](https://www.booster-fig.com/wp-content/uploads/2020/05/dl-linalool-structural-formula.png)
d -リナロールとl -リナロールは似ているように見えます。ほんのちょっとの違いで、香りに差が生じています。
![フィグ](https://www.booster-fig.com/wp-content/uploads/2022/01/f0fc1d7efd3b37b0f38d0114cdae51ac.png)
他でよく聞くのが、d-リモネンとl-リモネン、l-メントールですね。
4.N-メチルアントラニル酸メチル Methyl N-Methylanthranilate
![](https://www.booster-fig.com/wp-content/uploads/2020/05/Methyl-N-Methylanthranilate-structural-formula.png)
左の図 :簡略された構造式
真ん中の図:炭素(C)を表した構造式
右の図 :炭素(C)と水素(H)を表した構造式
![フィグ](https://www.booster-fig.com/wp-content/uploads/2022/01/8bfa711f9df911d9c9966991f4bc2b01.png)
リナロールと比べて、すっきりした分子ですね。
5.ユズノン Yuzunone
![](https://www.booster-fig.com/wp-content/uploads/2020/05/yuzunone-structural-formula.png)
ユズノンはゆずのフレッシュな果皮感に影響を与える成分です。構造式としては直線状の分子です。(直鎖構造と言います)
以下のように回転させると、直線状であることがより分かりやすくなります。
![](https://www.booster-fig.com/wp-content/uploads/2020/05/yuzunone-rotation.png)
6.まとめ
ゆずらしさに関係する成分は以下です。
![](https://www.booster-fig.com/wp-content/uploads/2020/05/yuzu-aroma-component.png)
・チモール
・ペリラアルデヒド
・リナロール
・N-メチルアントラニル酸メチル
・ユズノン
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<参考文献>
(1) 長谷川香料株式会社『香料の科学』講談社 (2013)
(2) 日本香料協会『香りの百科』朝倉書店 (1989)
(3) 川口健夫訳『精油の化学』フラグランスジャーナル社 (2013)
(4) 日本化学会編『香料の科学』大日本図書 (1983)